ゴムタイヤで走る地下鉄
東京や大阪など、全国9都市を走る地下鉄ですが、札幌市の地下鉄だけは、他には見られないゴムタイヤ式を採用しています。
札幌市の地下鉄では、鉄の車輪に代えて、自動車と同じようなタイヤを装着しています。また、軌道の中央には、金属製の「案内軌条」を設置しています。一般的な鉄道のレールには、車輪と接して車両を支えることと、車両の進行方向を制御するという2つの役目がありますが、案内軌条は後者の進行方向を制御する役目を担うもの。ここへ走行用とは別のタイヤを当て、車両の進行方向を制御しています。
ゴムタイヤ式では、鉄の車輪を使う一般の鉄道に比べ、加減速性能や登坂性能に優れています。また、ロングレールが一般的ではなかった時代には、ゴムタイヤ式の方が一般鉄道よりも静粛性に優れていました。この静粛性は、札幌への地下鉄建設を推進した、当時の札幌市交通局長の大刀豊氏が、ゴムタイヤ式の導入を推したきっかけになったと言われています。
また、南北線の郊外区間では、建設費削減のためにトンネルではなく高架線が建設されましたが、札幌では冬季の除雪が問題になります。そこで札幌市交通局は、この区間にシェルターを設置し、高架区間ながらトンネル内を走るようなスタイルとしました。このシェルターは、新幹線や東海道貨物線などでも、騒音や降雪を避けるためにトンネル間をつなぐ形で設置している箇所がありますが、複数駅間にまたがるものは札幌市以外に例がありません。
同じゴムタイヤを使うシステムとしては、「自動案内軌条式旅客輸送システム」(AGT)、いわゆる「新交通システム」がありますが、札幌市のものとは別方式で互換性はありません。
また、大刀豊氏に影響を与えたパリメトロなど、海外でもゴムタイヤを用いた地下鉄はありますが、札幌市のシステムはどの路線とも異なるもの。札幌市のゴムタイヤ地下鉄は「札幌方式」とも呼ばれる、唯一無二の方式なのです。