最後に残ったトロリーバス
ケーブルカーやロープウェイなど、さまざまな乗り物を乗り継いで長野県と富山県の県境を越える「立山黒部アルペンルート」。ここには、日本で最後のトロリーバス、立山トンネルトロリーバスがあります。
架線から得た電力で走るトロリーバスは、日本の法令上では「無軌条電車」、つまりレールが無い電車ということで、鉄道の一種とみなされます。車両の機器構成も鉄道に類似しており、運転席には鉄道車両のようなメーターが。現在の車両では、発進時に電車と同じVVVF制御装置の磁励音が聞こえてきます。
日本においては、かつては都市部でも運行されていましたが、性能が向上した一般のバスに置き換えられるなどして、1972年までに順次廃止されていきました。
一方、中部山岳国立公園内を通る立山黒部アルペンルートでは、エンジンから出る排ガスが、環境に影響を与えるのではという懸念がありました。そこで、1964年に一般旅客へ開放された扇沢~黒部ダム間の関電トンネルでは、電気で走るトロリーバスを採用。当初はエンジンで走るバスを運行していた室堂~大観峰間の立山トンネルでも、1996年からはトロリーバスでの運行に変わりました。
関電トンネルでは54年にわたってトロリーバスが使われてきましたが、車両の置き換え時期が来た際に、蓄電池に充電した電力で走る電気バスを導入し、トロリーバスとしての運行は2018年に終了しました。一方、立山トンネルのトロリーバスは置き換えについての発表はなく、未だ現役。今後もしばらくは、日本唯一のトロリーバスとしての活躍が続くようです。