鉄道コム

日本にただ一つ、珍しい鉄道システムの数々

2020年7月4日(土) 鉄道コムスタッフ

今は唯一の「浮いて走るリニア」

リニアモーターカーといえば、JR東海が開発を進めている超電導リニアがありますが、こちらは2027年に東京~名古屋間が開業する予定で、まだまだ実用化は先のことです。

一方、高速鉄道ではありませんが、「浮いて走るリニアモーターカー」を一足早く実現したのが、愛知県を走る愛知高速交通東部丘陵線、通称「リニモ」です。

日本で唯一営業運転に就いている、浮いて走るリニアモーターカーの「リニモ」(幽谷響子さんの鉄道コム投稿写真)
日本で唯一営業運転に就いている、浮いて走るリニアモーターカーの「リニモ」(幽谷響子さんの鉄道コム投稿写真)

リニモは、日本で唯一の「HSST」採用路線。HSSTは、電磁石をマイナス269℃にまで冷却することで強い力を得る超電導リニアと異なり、常温の電磁石を用いて浮上する方式で、1センチ程度浮いて走行します。浮上走行するということは路面との摩擦が無いため、ゴムタイヤで走る一般的なAGTよりも速いスピードでの運転が可能。リニモでは、最高時速100キロでの運転を実施しています。

HSSTは、都心から離れた成田空港へのアクセス手段として、日本航空が1972年に開発を始めたものでした。空港連絡鉄道に用いる技術として、当初は新幹線並みの最高速度を想定していたといいます。技術開発は順調に進み、1985年のつくば万博や、1989年の横浜博などでは、展示の一つとしてデモ走行が行われました。期間が限られていたとはいえ、日本において誰もが乗れる初めてのリニアモーターカーとなったのは、このHSSTです。

しかしながら、HSSTの開発は次第に高速鉄道から中量輸送交通手段としてのものにシフトしていきます。1989年には名古屋鉄道が筆頭株主となる中部エイチ・エス・エス・ティ開発が設立され、名鉄築港線沿いに実験線を建設。小型・中型の車両による試験を繰り返し、実用化の目途をつけました。

1990年代初め、名古屋市営地下鉄東山線のルートを延伸する形で藤が丘~長久手間を結ぶ、新たな鉄道路線の建設が計画されました。この際、経由ルートの急勾配などを勘案した結果、HSSTの採用が決定。折しも愛知万博の開催が決定したこともあって、これに間に合わせるべく建設がすすめられました。

リニモは、2005年の3月6日に藤が丘~万博八草(当時)間が開業。同年3月25日から約半年間にわたって開催された万博へのアクセス手段として活躍し、その先進性から、会場外のパビリオンのような役割も果たしていました。万博終了後は、長久手市を通る唯一の鉄道路線として、地域住民の足となり活躍しています。

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