新駅開業……ではないけれど、将来への伏線「うめきたエリア」
3月のダイヤ改正にあわせて、大阪では「うめきたエリア」が開業しました。大阪駅の北西に設置された地下駅で、2面4線のホームという設備。うめきたエリアという愛称はつけられていますが、駅としては大阪駅の一部を構成します。
大阪駅北西のこのうめきたエリア周辺は、かつては貨物駅「梅田駅」があった場所でした。大阪駅前という一等地を活用すべく、国鉄分割民営化のタイミングで再開発計画が持ち上がり、吹田操車場(現:吹田貨物ターミナル駅)などへの機能移転を経て、梅田駅は2013年に廃止。以降、地下駅建設や、地上での再開発が進められてきました。
この新ホームを通るのは、東海道本線の貨物支線、通称「梅田貨物線」です。貨物線という名称ではありますが、旅客列車も多く運転されており、特急「はるか」「くろしお」などがこの線路を経由しています。これまでは、大阪駅の北西を通りつつ、同駅は「素通り」だった両列車ですが、新ホームの開業によって、晴れて大阪駅が停車駅に。神戸方面から関西空港や和歌山方面へ向かう際、これまでは新大阪駅や、大阪環状線経由で天王寺駅などで乗り換える必要がありましたが、この不便さが解消されています。
加えて、大阪のキタとミナミを結ぶ「なにわ筋線」も、うめきたエリアが起点となる計画。なにわ筋の下を経由し、大阪駅とJR難波駅・南海の新今宮駅を結ぶこの路線では、JRの「はるか」や関空快速、南海の「ラピート」や空港急行などが運転される予定で、大阪中心部と関空のアクセス改善が期待されています。さらに阪急でも、なにわ筋線と接続する「なにわ筋連絡線」「新大阪連絡線」の整備を検討しています。直近の報道では、JR西日本の列車も阪急の新線に乗り入れ、新大阪~十三~うめきたエリア~なにわ筋線~JR難波~関空方面という列車運行を計画しているとのこと。現在はおおさか東線と特急列車のみが発着する、少々閑散とした印象があるうめきたエリアですが、将来的には大規模なジャンクションへと変貌することになります。
JR西日本はうめきたエリアについて、イノベーションの実験場「JR WEST LABO」の中心と位置付け、新たな価値創造の推進やさまざまな課題解決に取り組む場としています。JR東日本の高輪ゲートウェイ駅と同じような立ち位置となるこのエリアで、同社は顔認証改札機や「デジタル可変案内サイン」を導入。前者は実証実験としての設置ではありますが、将来的な実用化に向けた検証を、同エリア開業時に着手しています。
加えて、21番線にはフルスクリーンホームドアを設置していますが、こちらは複数の車種に対応した新型のもの。一般型車両や特急型車両で異なるドア位置に対し、ホームドアの「壁」が動くことで対応。現在うめきたエリアを発着する列車だけでなく、なにわ筋線開業時に乗り入れる他社車両への対応設備となっています。