北の大地を駆けた特急も、タキシードボディも、初代「新快速」専用車も引退
デビューする形式があれば、逆に引退する形式もあります。2023年は、新形式よりも引退形式の方が多い年となりました。
3月のダイヤ改正では、JR北海道のキハ183系、JR東日本の651系、JR西日本の和田岬線用103系が営業運転を終了しました。
キハ183系は、1980年に営業運転を開始した特急型のディーゼルカーです。北海道専用形式として開発(後にJR九州「オランダ村特急」用車両もキハ183系として登場)された車両で、国鉄時代からJR北海道発足初期にかけて製造されました。デビュー当時の先頭車は非貫通型の「スラントノーズ」タイプでしたが、後に貫通型先頭車の製造に移行し、引退直前には貫通型グループのみが残っていました。また、キハ183系グループに含まれる「ノースレインボーエクスプレス」も、4月に営業運転を終了しています。
651系は、1989年に常磐線の「スーパーひたち」でデビューした特急型電車。JRグループで初めて時速130キロでの営業運転を実現した車両で、その白い車体から、デビュー当時のPR文では「タキシードボディのすごいヤツ」と呼ばれていました。常磐線ではE657系の投入により撤退しましたが、2014年からは高崎線系統の特急列車群で活躍していました。
103系は、言わずと知れた国鉄型通勤電車の代表的存在。1963年から3447両が新製(改造編入車を含めると3503両)された、一大鉄道車両グループです。2023年3月の改正で引退した和田岬線用の103系R1編成は、6両という比較的長い編成かつ、登場時デザインの面影を残した最後の存在でした。同編成の引退で、現在の103系は、2または3両編成が残るのみとなりました。
6月には、JR東日本の「SL銀河」が運転を終了しました。
SL銀河は、釜石線を走ったSL列車。岩手県出身の宮沢賢治が執筆した小説「銀河鉄道の夜」をモチーフとしており、客車には星座などのデザインが盛り込まれていました。また、SLのC58形239号機が、「客車役」であるディーゼルカーのキハ141系をけん引するという編成も特徴。勾配の多い釜石線でSLをアシストするためにディーゼルカーが選ばれたのですが、「客車」が自走できるというSL動態保存列車は、これまでに例がありませんでした。
今回の運転終了は、客車役のキハ141形の老朽化によるものですが、定期的に運転されていたSL動態保存列車の廃止例としては、JR東日本では初(季節臨的な列車を含めれば「SL会津只見号」の廃止以来6年ぶり)となります。なお、同列車用のキハ141系はJR北海道から譲渡されたものですが、そのJR北海道においても、5月にキハ141系(キハ143形)が定期運転を終了しています。
7月には、JR西日本の117系が、営業運転を終了しました。1980年に京阪神エリアの「新快速」用としてデビューした117系は、その後名古屋エリアにも新製投入され、さらには京阪神から中国エリアへ転属したものも。末期には、京都エリアや岡山エリアの普通列車で運用されていました。
そしてもう一つ、7月にはJR東海のキハ85系も引退。1989年にデビューした特急型ディーゼルカーで、特急「ひだ」「南紀」で活躍してきました。2022年デビューのHC85系によって置き換えられ、大部分が引退しましたが、一部はWILLER TRAINSに譲渡されており、今後は同社線内の特急予備車として使用される予定となっています。
そして12月には、小田急電鉄のロマンスカー50000形「VSE」が引退。デビューから20年も経過していない若い車両でしたが、今後の使用を継続するにあたっての更新工事が難しいことから、早期の引退となりました。定期運用自体は2022年3月に終了していましたが、その後も団体臨時列車での活躍が続いていました。
このほか、JR東日本の719系「フルーティアふくしま」およびキハ40系「クルージングトレイン」、JR西日本の「奥出雲おろち」、東急8500系、都営地下鉄5300形、名古屋市営地下鉄3000形、神戸市営地下鉄1000形・7000形、関東鉄道キハ310形、長野電鉄3500系といった車両たちが、2023年に定期運転を終了しています。