JRや大手私鉄の一般形車両では、性能や車両設備などの仕様をそろえ、さらには量産効果によるコスト削減も狙えるため、同じ形式を多く製造することが一般的です。しかしながら、増発目的で数本だけが必要だった、当時は置き換え対象車両がわずかだった、などの理由により、結果的に少数のみの製造で終わってしまう車両も見られます。
試作車両ではないにも関わらず、わずかな製造数で終わってしまった車両たち。そんな車両を、東海・西日本・四国・九州の各エリアで、現在も活躍を続ける形式の中からご紹介します。
「シリーズ21」の第1弾
近畿日本鉄道の新世代一般形車両「シリーズ21」。このシリーズの第1弾として2000年に登場したのが、京都市営地下鉄烏丸線との直通運転に対応した3220系です。
シリーズ21は、21世紀を迎えるにあたって、新たなコンセプトを導入した車両群のことです。それまでは「マルーンレッド」と「シルキーホワイト」のツートンカラーだった近鉄の一般車ですが、シリーズ21では「アースブラウン」と「クリスタルホワイト」のツートンに「サンフラワーイエロー」のラインを差した新たなデザインに。このほか、車内でのバケットシートや両肘掛け付シート「らくらくコーナー」の採用、省エネ・省メンテナンス化の推進など、同社が目指す新時代の車両として設計されています。
他のシリーズ21各形式と異なる特徴として、3220系では前面に非常用貫通扉を設置していることが挙げられます。他形式では他車との連結を想定した貫通扉を中央に設置していますが、3220系の非常扉は向かって左側に設置されているため、他のシリーズ21と印象が異なっています。
3220系は、烏丸線との相互直通運転区間の近鉄奈良駅までの拡大、および急行列車の直通開始にあわせ、2000年に6両編成3本が投入されました。運用は、烏丸線との直通運転開始時に投入された3200系と共通。京都線・奈良線の烏丸線直通列車に充当されるほか、難波線や橿原線などで運転されることもあります。