2024年の鉄道業界では、新線開業や新型車両のデビュー、歴戦の車両の引退と、さまざまな動きがありました。路線や車両の動きなど、今年起こった出来事を振り返ってみましょう。
北陸新幹線開業
2024年の鉄道関連の話題でも目玉と言えるのが、3月16日に延伸開業した北陸新幹線です。1997年に高崎~長野間、2015年に長野~金沢間と延伸を繰り返してきた北陸新幹線ですが、2024年はついに、福井県の敦賀駅まで延伸。これにより、北陸3県すべてが新幹線の通る県となりました。
延伸開業した金沢~敦賀間では、越前たけふ駅が新駅として開業したほか、小松、加賀温泉、芦原温泉、福井、敦賀の5駅が新たに新幹線の停車駅となりました。延伸区間では、従来は金沢駅止まりだった速達タイプの「かがやき」、停車タイプの「はくたか」が、一部を除いて敦賀駅まで延伸する形で運転されており、東京方面と北陸を結ぶ役目を担っています。また、延伸前は富山~金沢間のシャトル列車として運転されていた「つるぎ」は、新たに関西・中京圏と北陸のアクセスの一翼を担う役目も担うことに。大部分が敦賀駅で在来線特急「サンダーバード」「しらさぎ」と接続し敦賀駅で接続する形となり、延伸前はなかった速達タイプの「つるぎ」も登場しています。
新幹線開業によって、特に東京~福井・敦賀間の所要時間は、大幅に短縮されました。最速達列車での所要時間は、東京~福井間が2時間51分で、36分短縮。東京~敦賀間は3時間8分で、50分の短縮を実現しています。
新幹線延伸開業の裏で、これまでJRが運営してきた北陸本線の金沢~敦賀間は、第三セクターに経営分離され、金沢~大聖寺間がIRいしかわ鉄道線、大聖寺~敦賀間がハピラインふくい線となりました。「本線」を名乗る北陸本線ですが、新幹線延伸以降は、敦賀~米原間45.9キロ(営業キロ、以下同)の「ミニ本線」となってしまいました。かつて直江津~米原間353.8キロだった頃と比べると、現在は往時の7分の1以下の路線長となっています。
また、新幹線が敦賀駅まで延伸したことで、在来線特急の運転区間は短くなり、「サンダーバード」は大阪~敦賀間、「しらさぎ」は名古屋・米原~敦賀間に。「ダイナスター」「おはようエクスプレス」「おやすみエクスプレス」の3列車は廃止となりました。
敦賀駅では、新幹線と在来線特急の乗り換えが必要となり、新たに開業した新幹線駅舎の1階には、在来線特急が乗り入れる形態となりました。一時期は新幹線と在来線特急の対面乗り換えを検討していたこともあったようですが、これは最終的に断念されています。
北陸新幹線延伸開業で、首都圏方面から北陸3県へのアクセスは飛躍的に向上したのですが、関西圏・中京圏から福井・金沢方面へは敦賀駅での乗り換えが必須となり、利便性は低下してしまいました。この根本的な解決には、北陸新幹線の全線開業、すなわち新大阪延伸が待たれるのですが、2024年現在は着工に至っておらず、工事が始まったとしても、工期は最長28年の見込み。別案として話題に挙がる「米原ルート」も、米原~新大阪間の東海道新幹線乗り入れが困難なことから、JR西日本は否定的な考えを見せています。どちらにせよ、関西圏と北陸3県との往来は、今後しばらく、敦賀駅で乗り換える形態が続くことになります。
なお、JR西日本の長谷川一明社長は、11月の定例記者会見にて、在来線特急を敦賀駅から福井・金沢方面へ走らせる(復活させる)考えはないかと問われた際、否定的な考えを示しています。一方で、2024年に度重なる自然災害の被害を受けた能登半島の復興キャンペーンという形では、あくまで臨時列車ではありますが、政府与党内における北陸新幹線関連の会議において「運転を検討したい」と発言しています。