消えるきっぷ、新しく生まれたきっぷ
新型コロナウイルスの影響で、ここ数年は通勤客をはじめとする鉄道利用者が減少。一方で、2022年に入ると旅行需要が持ち直したことで、行楽シーズンの乗車率は前年よりも増加しました。この情勢を受けて、鉄道各社では乗車券類の改廃が進められました。
各社で廃止が目立ったのが回数券。ご存知の通り、10枚分の値段で11枚分が購入できる、などの若干お得なきっぷですが、ICカード利用率の増加、乗客の利用動向変化、経営環境の変化などを理由に、各社で廃止が目立ちました。
回数券の廃止自体は、2020年実施の京阪電気鉄道、2021年実施のJR九州など、以前から着手する事業者が見られました。しかし、2022年に入るとこの動きは加速。JRは全社が回数券を廃止しており、大手私鉄で来年春以降も発売を継続するのは、京成、京急、京王、近鉄、南海の5社のみとなっています。
一方で、復活しつつある観光需要を盛り上げようと、各社からさまざまな企画きっぷが発売されました。JR東日本では、鉄道開業150年と絡めた「JR東日本パス」を発売。JR北海道でも、2020年から継続して全線フリーきっぷ「HOKKAIDO LOVE!6日間周遊パス」を発売しました。この中でもユニークな取り組みとして注目を集めたのが、JR西日本の「サイコロきっぷ」です。
フリーきっぷではない通常のきっぷでは、目的地を決めて購入します。一方のサイコロきっぷでは、スマホアプリ上でサイコロを振って行先を決めるのが特徴。初回は白浜、餘部、東舞鶴、倉敷、芦原温泉、尾道、博多の7か所が行先候補で、どの場所が選ばれるかわからないドキドキ感から話題となりました。
当初は大阪発で発売されたサイコロきっぷは、第2弾として広島発が登場。そして2023年にも、第3弾の大阪発が発売される予定です。
JR東日本でも12月、同様に行先が当初は決まっていない「どこかにビューーン!」のサービス提供を開始しました。こちらは現金で購入するきっぷではなく、JR東日本グループのポイント「JRE POINT」の特典きっぷ。通常の特典交換よりも必要ポイント数が少ないため、オトクな旅行が可能です。
この仕組み自体は、日本航空(JAL)が2016年12月より提供している「どこかにマイル」に近いもの。どこかにマイルのサービス開発に携わったNRIデジタルなどが、運営知見や保有する特許を活かし、開発したということです。